入社して3週間ほどたった、客室乗務員の訓練真っ最中の出来事。

訓練は、笑顔の筋肉の訓練でもあり、それこそが現場で必要なスキルなんだと感じた一件です。

るる子は、基本的に熱心に、まじめに訓練を受けていました。訓練中のペーパーテストはほぼ全て満点でしたし、教官のお話も聞き洩らさないように緊張して訓練を受けていました。

訓練とはいっても最初は座学であり、飛行機の構造や、提供する飲み物・食べ物に関する知識、英語などを、大学の講義のように、いえむしろ厳しい私立女子高のような雰囲気で学んでいきます。

現実に厳しい私立女子高を卒業し、大学の少々ゆるい4年間を経て飛び込んだ世界はなんとも懐かしい匂いのする空間でした。

ただし、生徒は全く違いました。るる子のいた学校は厳しかったので、基本的に全員まじめで「ダルい」とか「規則がうるさい」などという意見はきいたことがなかったのです。

そこはやはり全国から人が集まってゼロから訓練を受けるわけですから、いきなりその空気になじめと言っても難しいわけですね。

でも、ここは会社で学校ではありません。ですからもちろんみんな表面は取り繕います。

表だって不満を口に出す人などいません・・・休み時間以外は。

休み時間には不満や願望が爆発している人がいました。

「なんやねん!人のメイクが濃いだの髪型が悪いだの!」

関西からの面白い女の子が怒りをあらわにしているのもいつものこと。

「座学ばっかりつまんないわ~、被写体ならまかせて。」

自信満々の子が早く現場にでてお客さまに「一緒に写真撮ってください」といわれたい、とポーズをきめていたり。

 

正直言って、まじめにヤル気あるのか?と思っていました。

だから、まさかそんな強烈なキャラクターを持つ面々の中で、自分が名指しで注意されるとは思っていなかったのです。

 

「後ろの席で睨みつけてくる子がいます」

と、クラスの担当教官のもとに連絡が入りました。

いつも明るく仲良く教官とも話していました。ですから、教官も信じられないという顔で近付いてきました。

「るる子さん、あなたのことなの。」

 

正直言ってびっくりしました。いつも誰とでもにこやかに話していたし、丁寧に接している自信がありました。

間違いじゃないかと思った時、理由がわかりました。

 

「授業中の授業を聞いているときに真顔でじっと見てきて怖い。」

 

なるほど。たしかに真剣な顔で私はきいていたでしょう。

授業が始まってクラスの面々を見ていると、にこにこにこにこしながら訓練をうけているじゃありませんか。

 

気付かなかったな~、英語の授業中に笑わなきゃいけないなんて。

 

そう、ここは学校ではなく会社。

それも笑ってなんぼのお仕事です。

教室で笑えなきゃキャビンでなんか笑えません。

2か月訓練を受ける間、にこにこにこにこし続けて、ほっぺの筋肉を鍛えます。

一日中わらっているとほっぺがひきつりそうになりました。

 

表情筋も、鍛えるとだいぶ持久力がつきます。

笑顔の質もあがります。

 

鏡を見て左右均等に一番魅力的に見える笑顔を筋肉の感覚で覚えます。

キャビンで自分の顔は確認できませんから。

これは日常生活にも役立ちますからやってみてください。

笑顔が魅力的なひとは、2割増しきれいに見えますから。